だってキミが好きだった






白いソファーに座り、ボーッと夜空に輝く満月を眺めていた私。



その原因は数時間前の図書室の出来事だ。



……結局あの後、彼が起きるまで傍にいたけど。


彼が起きたのを確認してすぐに教室に向かった。




だけどその後考えるのはやっぱり彼のことで。



さっきもそのことを考えていた。



考えないようにしたいのに。







「……千早くん、かぁ」






私の隣に腰を下ろし、悲しそうな瞳を満月に向けてユラリユラリと揺らすお母さん。





お母さんが今何を考えているのか。


分かる、な。






「……でも千早くんが学校にいるからって何で千歳くんの名前を出したらいけないの?」


「……千歳さんの名前出されたら、彼のこと考えちゃうから」






なるべく考えないようにしてるから。



だからあんまり彼と関係していることは話さないで欲しい。






「……そう」






お母さんはそれ以上何も言わない。



ただその悲しげな瞳は満月ではなく、私に向けられている。




カチリ、カチリ。




時計の針が動く音だけ聞こえる。




何も話さない私とお母さん。



二人しかいないこの空間は静かだ。






「……菫ちゃん、もう夜も遅いからそろそろ寝ましょう?」


「……分かった」


「おやすみ菫ちゃん」


「おやすみ」






そう言ってフワリと笑うお母さんは、ソファーから立ち上がって自分の寝室へと向かう。








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