だってキミが好きだった
***
『ねぇ、一人って寂しいかな?』
『……何、急に』
『気になっただけ』
『へぇ。……一人、か』
あぁ、懐かしい。
『一人は寂しい』
それはまだ。
幸せだった頃の記憶――。
『なんで……っ!!!』
そう。
あの頃はまだ、幸せだったんだ。
「っ、」
ガバッと上半身を起こし、手をソファーに付けてバランスを取る。
……嫌な夢見ちゃった。
はぁ、と息を吐き片手を顔に当てる。
すると指にツウッと落ちていく冷たい感触に気付き、顔から手を離した。
「……涙」
流れてたんだ。
どうした私。
「また、見始めた」
彼を意識しすぎじゃないか。
最近、あの夢は見なくなってたのに。
彼が転校してきたあの日からまた見るようになってきた。
……でも。
今日はいつもみたいに苦しくないな。
『一人は寂しい』
……久しぶりに幸せだった頃の夢を見たから、かな。