だってキミが好きだった
ふぅ、と息を吐いてソファーにちゃんと座りなおす。
視線の先に見える満月はまだ輝きを失っていない。
「……今何時…うそ、私あんまり寝てない」
寝る前に見たとき、12の数字を指していた針は今2の数字を指している。
2時間しか寝てない……。
どうしよう。
「もう一回寝ようかな。……でもなんか目、覚めちゃったけど」
意識も大分はっきりしてる。
……どうしようかねぇ。
輝く満月を見ながら、うーんと考える。
綺麗だなぁ、満月。
まんまるだ。
……あ、そうだ。
「……すぐに帰って来れば問題ないよね」
トンッとソファーから立ち上がり、足音を立てないようにゆっくりと玄関へ向かう。
服は別にスウェットだから着替える必要はないよね。
そう思いながらスニーカーを履いてトントン、とつま先を地面に打ち付ける。
ガチャリとドアを開けば夏の生暖かい風がフワリと肌を滑った。
……夜中だからやっぱりそんなに暑くない。
「行って来ます」
小さな声でそう言ってからバタンとドアを閉める。
誰一人姿の見えない道をただブラリブラリと歩いていく。