だってキミが好きだった
シンとしている夜中、走る足音は響く。
「はぁ、はぁ…っ、」
普段こんなに走らないのに、息を乱してまで走ってる。
ザワリ、ザワリ。
どうしてだろう。
ザワリ、ザワリ。
どうして、だろう。
ザワリ、ザワリ。
――胸騒ぎがする。
「っ、千早…!!」
なんで彼の名前なんか呼んでるの。
なんで彼の顔が浮かんできたの。
この夜中に、彼がいるわけがないじゃないか。
今彼が何処に誰と住んでるだなんてそんなの知らないけど。
もしも前のままなら。
こんなとこに来るのはおかしい。
「ちはや……っ、」
でも彼の名前を呼ぶ私は、もっとおかしいのかもしれない。
この胸騒ぎの正体は何?
何で私は彼の名前を呼んでるの?
…―この胸騒ぎの正体に、彼が関係してるっていうの?
腕を交互に動かし、歩幅を大きくして走る。
乱れる髪に額を伝う汗。
そんなの今は良い。
この胸騒ぎをどうにかしたい。