だってキミが好きだった
振り絞って出た声は小さい。
聞こえてるか聞こえてないかも分からない。
彼を見ると、どうも怖気づいてしまう。
学校で見る彼とは全然違う。
「……」
私の言葉に無言の彼。
やっぱり聞こえてないのかな?
どうしよう、もう一回言うべきか。
公園の入口で立ち止まったまま、そう考えていれば。
彼は私から視線を逸らせ、また顔を上にあげた。
その視線の先は満月。
……満月、好きなのかな。
彼と満月かぁ。
そうだな。
どことなく、今の彼と満月は似てる気がする。
満月は見れば見るほど儚い様に見える。
今の彼もそうだ。
見れば見るほど、儚い。
「……ぅ、」
ピクリ。
倒れている男が動いたのが視界に入る。
そしてそれと同時に小さな声も聞こえた。
「…っ、この…野郎……!!!」
ゆっくりと起き上がっては、拳を彼に向ける男。
あぶな、い。
危ない!!!
「千早!!!」