だってキミが好きだった
気付けばそう、叫んでいた。
ただただ“千早が危ない”。
そう感じて。
彼は私の声にハッと反応し、急いで満月から視線を逸らせた。
男の拳はもう、彼の顔の間近。
「千早危ない!!!」
たぶん同時だったと思う。
ドカッ。
そんな音がしたのと、私が彼の元へ向かったのは。
「う゛っ、」
……う、そ。
「……弱」
バタン。
そんな音がして、男が倒れる。
その光景を見た私の足は、さっき動いていたのにいつの間にか止まっていた。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
彼の顔の間近まで来ていた男の拳を彼は瞬時に避けて。
男の腕を掴み、そして自分の方へ引っ張った。
そして――男のお腹にドスッと拳を入れたのだ。
……慣れてる。
それだけじゃない。
前よりも、強い。
彼は元から柔道や空手をやっていたから昔から一応強かった。
だけど前よりも強いと思う。
でもそんな冷たい目はしてなかったな。