だってキミが好きだった
「……図書室でアンタ言ったから」
「……」
「“ごめんね”って」
目線は逸らしたままだけど、彼の声がだんだん小さくなっていったのが分かる。
「……悪かった、言いすぎた」
その言葉だけはちゃんと私の目を見て言う。
……あの言葉聞こえてたんだ。
そ、っか。
――クスリ。
「?」
謝る彼に小さく笑った私。
そんな私を彼は不思議そうに見ている。
……―懐かしい。
『……何、千早』
『……』
『……許してないからね』
『……分かってる』
『じゃあ何』
『悪かった、菫』
私と彼が喧嘩した時同じように謝られたっけ。
……そんなとこも同じか。
案外前の彼と変わってないところも沢山あるんだね。
ちょっとだけ驚いた。
「ううん、あれは私が悪かったから」
ははっと笑ってそう言う。
本当はそういう場面じゃないはずなのに。
なんでかな。
ちょっとだけ、昔に戻れたみたいで嬉しい。