だってキミが好きだった







***






……なんだ、誰もいないじゃん。




気持ち良い風がフワリと吹き、沢山ある木の葉がサワサワと揺れる。




広い道に向かい合わせにして左右に並ぶ椅子に腰を下ろして

私ははぁ、と溜息をついた。




待ち合わせ場所の公園に着いてみれば、まだ誰一人来ていない。




早く来すぎたのかな。




まぁお母さんに無理やり追い出されたのもあるけど、

私にとっては丁度良い時間で出たつもり。





そう思いケータイで時間を確認する。




……約束の時間から15分前、か。



なんだ。丁度良いくらいじゃない。



……あぁ、そっか。



ケータイに映し出されている数字を見ながら私は目を細める。





「……15分前ねぇ」






そう呟き、私はフッと唇に弧を描く。




ズキリ、ズキリ。


痛い、な。


ズキリ。


――痛いよ。






「……癖って中々抜けないんだね」






ポツリと呟いた言葉はサアッと吹く風に消えていく。




約束から15分前。



それは確かに丁度良い時間。





私と彼にとっては。






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