だってキミが好きだった
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……なんだ、誰もいないじゃん。
気持ち良い風がフワリと吹き、沢山ある木の葉がサワサワと揺れる。
広い道に向かい合わせにして左右に並ぶ椅子に腰を下ろして
私ははぁ、と溜息をついた。
待ち合わせ場所の公園に着いてみれば、まだ誰一人来ていない。
早く来すぎたのかな。
まぁお母さんに無理やり追い出されたのもあるけど、
私にとっては丁度良い時間で出たつもり。
そう思いケータイで時間を確認する。
……約束の時間から15分前、か。
なんだ。丁度良いくらいじゃない。
……あぁ、そっか。
ケータイに映し出されている数字を見ながら私は目を細める。
「……15分前ねぇ」
そう呟き、私はフッと唇に弧を描く。
ズキリ、ズキリ。
痛い、な。
ズキリ。
――痛いよ。
「……癖って中々抜けないんだね」
ポツリと呟いた言葉はサアッと吹く風に消えていく。
約束から15分前。
それは確かに丁度良い時間。
私と彼にとっては。