先生+生徒-学校【67頁】+【160頁】
その後、
今度こそ電話線を抜こうとして、
その前に佐藤君の『佐藤ですけど』のメッセージを消そうとして、
間違って私は一件目の履歴を再生する。
日付は二週間以上前。
タカオちゃんと大ゲンカした、ちょうどその時間。
先生と対決したあの日のあの夕方。
流れてきたメッセージに、
私はぽかんとして口を開けた。
それからもう一度再生して、
爆笑した。
お腹がよじれるくらい笑い転げて、
もう一度再生した。
それはリョースケ先生の声だった。
およそ先生からは想像つかないような、
聞いたら思わず笑っちゃうような、
しゃちこばったメッセージだったけれど、
とても真っ直ぐな、声だった。
真摯で誠実な、声だった。
受話器の向こうの
言葉の奥の
先生の気持ちがちゃんと、伝わってきた。
最後に姿勢を正しておごそかな気持ちで、
もう一度メッセージを再生する。
たとえば
とりつくろってたり、
ふざけてたり、
借り物の言葉だったりしたとしても。
気持ちの問題だよね、気持ちの。
「―――よし。」
先生の声をお手本に。
私は胸の中で、もう一度先生のメッセージを再生しながら、
タカオちゃんちの番号を押した。
『どうも、こずえさんの担任です。
今日はお忙しい中お時間を頂き、
ほんとうにどうもありがとうございました。
まだまだ至らないところが多くて、
ちから及ばず、申し訳ありません。
後はこずえさんの気持ち次第だと
思いますので、―――・・・』
必ず、こずえさんは来てくれると思ってますので、
これからは教室で、こずえさんのことを待とうと思います。
―――
―――・・・
プルルルル
プルルルルッ
『・・・ハイ、もしもし?』
「・・・タカオちゃん?」
【夜明け前】は結構明るい。了