先生+生徒-学校【67頁】+【160頁】
「俺、そんないい人間じゃないよ。
悪人って程じゃねえけど。(笑)」
ぼうぜんとして、
タバコの煙ごしに、先生の顔を見る。
なにも、頭にはいらない。
その様子を見て、センセイが軽く笑う。
「だけどさ、
『生徒』達は、キラッキラした目で、
『せんせー』って寄ってきてくれんだよ。
しかも、すっげえスナオなよいこ達でさ。
うぉ、まぶしー!!って感じ。
俺、汚れててスイマセン!!って。(笑)」
楽しそうに、へらへら笑う。
そうしてると、その辺にいる、
ガラの悪い兄ちゃんにしか、見えない。
笑いながらタバコを吸い、
ゆっくりと煙を吐き出すと、
不意に笑顔を消した。
「さすがに、この目は、裏切れねえよなあ。
そこまで鬼には、なれねーよ。」
どことなく、やわらかな口調だった。
座り込んで動けない私の目の前に、
しゃがみこむ。
近づかれて、怖くて、下を向いた。
センセイの声が、頭のすぐ上から降ってくる。
「だから俺はさ、
『先生』やってるから、
マトモな人間でいられんのよ。
キミタチ、生徒のおかげで、
マトモに生きてられるわけ。
そりゃもう、感謝してもしきれねえよ。
命かけてでも、守っちゃうよな。(笑)」
いつもよりももっと、やさしい声に、
おそるおそる、顔を上げた。
とても穏やかで静かな目が、
私をのぞきこんでいた。