私立凰華学園
第一章 始まりは桜が告げた


私立凰華学園……。

全国でも有名な倍率何百、何千を越える超のつく人気校。
そこには沢山のカリスマ、弁護士、多岐にわたるOBを輩出している事で有名なのである。

そんな人気校の合格通知を得た一人の少女が緊迫な面持ちで自分の背丈よりも幾分高い豪勢な造りの門を前にして立ち尽くしていた。

「ここが、私立凰華学園…」

自分が有名な能の名家の出であるから凰華学園の造りを見ただけでは驚きはしないと思っていたが……。

想像以上に豪華かつ、華やかである。
そして敷地が広い。

学園内に自分達の住む寮も有るからかこの広さでは下手をすれば迷子になってしまいそうだ。

その少女…胡蝶 鈴蘭(こちょう すずらん)は自分を落ち着かせるように静かに息を吸う。

そしてその場で息を吐いた。深呼吸である。

トクントクンと忙しなく働いていた鼓動はやがて落ち着きを見せ自分に平常心をもたらす。
そしてもう一度自分の手元にある合格通知を見やった。

「胡蝶 鈴蘭様
私立凰華学園 芸能コース Sクラスを合格したことを証明する」

その言葉に一字一句間違いが無いかしっかり確認する。そして黒い髪を靡かせてぎこちない表情で門をくぐった。

これから起こる二年間に期待と不安が混じった何とも言えない感情と共に。
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