私立凰華学園
一橋桃子先生は今や弁護士の資格と実力派女優と名高い有名な方です。
そんな先生の元で学べるなんて感激で言葉も出ません…!
「あ、ありがとうございます…!」
「いいえ。本音を言ったまでよ?…さて、と次は隣の君!行ってみようか」
桃子先生はニコリと笑って私の隣に座っている皆川さんを指差した。
「…僕ですか」
「そう!そんな本ばかり読んでないで。自己紹介も弁護士になる上で重要な事よ?」
桃子先生のその発言に皆川さんは一瞬迷惑そうに顔を歪めてその場に立ち上がる。
「皆川杏太です。特進司法コースSクラスで、特技はピアノです」
「ピアノね…弾いてもらってもいいかしら?」
「あくまで特技の範囲ですからここにいるプロの方には遠く及びませんが…それでも?」
「ええ、もちろんそれで構わないわ。これは自己アピールだもの」
皆川さんがピアノの前に座る。そして瞳を閉じる。
その瞳が開き皆川さんの細く長い指先がしなやかに指を走らせる。
その時一瞬にして悟った。
ああ、彼は音楽をやりたかったのだ。
それほどにまでその音色は情熱的で、感傷的だった。