私立凰華学園
入学式は至って普通に体育館で行われようとしていた。
しかし鈴蘭は立ち尽くしてしまった。何故なら自分の想像していた「入学式」とは遠くかけ離れていて。その眩いスポットライトに視界がチカチカしそうになったのだ。
一際眩い脚光を浴びているステージに立食式のパーティ。まるでどこかのお城のホールを貸し切ってのパーティを行っているかのようである。
「えっ…ここで合ってる、よ、ね…?」
思わず疑ってしまいそうになる。そしてこの学園生活に一抹の不安と期待を一気に抱いた。
期待はこの学園でなら自分は変われるのかもしれないというほんの少しの期待。
不安はこの先自分はしっかりとやっていけるのだろうかという不安。
どちらも自分に芽生えた感情だった。
この空気に圧倒される事無く何食わぬ顔で次々と自分の気に入った友人を見つけていく入学生を鈴蘭は尊敬する。
それをぽへーっと見つめている時だった。トントンと肩を叩かれて鈴蘭は後ろを振り向く。
そこには地毛の黒髪に少し茶のかかったショートカット。丸い大きなブラウンの瞳。鈴蘭の印象はまるで向日葵のような少女だった。
「え…っと…わ、私ですか…?」
「そう!あんたよ!私、神山 愛(かみやま めぐみ)!良かったら友達にならない?」
明るい笑みをこちらに向けられ、手を差し出される。鈴蘭は思わずキョトンと豆鉄砲でもくらった顔をしてしまった。
「神山…さん」
「その呼び方はやめてよ~。愛でいいからさ。えっと…そういえばあんたの名前聞いてなかった。何て名前なの?」
「私ですか?胡蝶 鈴蘭と申しますっ!」
「へぇ~!あんたが噂の胡蝶家かつ新入生代表か~…って今はそんな事関係無いんだった。鈴蘭って呼んでもいい?」
「はい!もちろんですっ!」
初めてこの学園に来てから友達が出来ました!
鈴蘭は胸が躍るような不思議な気持ちに襲われた。
そういえば家柄関係無しの友達は彼女が初めてのような気がした。