探し物
やはりこの時間帯に歩く人はいない。




時折目の前を運送業のトラックやセールスマンの車も走るけれど、それもまばらだ。






ぼくは、この人気の無い静かな時間が好きだ。



人目を気にすることなく、思い切り走ることができる。



ランニングにはとっておきの時間帯だ。







準備体操を軽く済ませ、充分足が動くことを確認してから、ぼくは走りだした。


毎朝五キロコースだ。







見慣れた住宅街、林間、線路脇を走るだけなのに、今日はなんだかいつもより鼓動が速く感じられた。




少し、疲れているのかもしれない。



けど、やっぱり異常だ。





久しぶりに走っているときや、少し体調の悪い時はこんなことが何度かあったけれど、正常で、しかも毎日のように走っている今、こんなにドキドキするのは何かの知らせかもしれない。




それとも、病気か。






身の危険を感じ、しばらく歩くことにした。




脈拍が安定するまで歩いたら、少し安心した。






やっぱり、なんでもなかったんだ。
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