花蓮【完結】
哲は少し震えた声で。
あたしの肩を引っ張って自分の方へ向ける。
信じられないとでもいうような顔をしてあたしを見ている。
何、あたしおかしなこと…言った?
「それって。
俺のこと好きってことだよね」
……え?
何でそうなるの?
「付き合えないってはっきり言えないって。
俺が好きだからでしょ?」
「いや、だから好きだと聞かれたら違うって」
「それも違うって。
麻美は好きを肯定したくないわけ。
麻美の中には独りで生きてくのが大前提だから、誰かを好きになることってありえないんだよ。
だから、俺への気持ちを肯定出来ないだけ。
だから、付き合わないってはっきり言えないんだって」
「……」
「…そうでしょう?」
そう、言いながら哲はあたしの髪の毛を愛しそうに撫でながら。
そのまま頬に手を置いてあたしへ近付いてくる。