花蓮【完結】
「井上さん、気分はどう?」
「………」
「…あのね、お母さんに電話したんだけど…繋がらなくてね」
「…あいつにかけても繋がんないですよ。
男といんだから」
あたしの返事にシンと静まりかえる。
少し間を空けて医師は話しだした。
「じゃあ、心して聞いてね」
医師は真っ直ぐ私の目を見つめている。
「以前、入院した時にCTを取ったのは覚えてるかい?」
CT?
…ああ、確かにとったような気がする。
「その時に井上さんの脳に腫瘍が見つかった」
………しゅ、よう?
「…って、大丈夫でしょ?
手術でちゃっちゃっと取れるんじゃないの?」
あたしの言葉に医師は押し黙って、視線を床に向ける。
…おい、黙るなよ。
ちょっと待てよ。
どういうことだよ?