花蓮【完結】
くたくたになったあたしの後ろから声をかけたのは。




「麻美ちゃん」






哲だった。






その声に急に緊張して、背筋をしゃんと伸ばす。
固まりながら振り向くと、あたしは哲の顔を見た。




「卒業、おめでとう」


「………あり、がと」



笑顔であたしに言う哲の顔を直視できなくて。
視線をずらしながらそっと呟いた。






すっとあたしの目の前に差し出された哲の大きな手。







………そこにはあたしを守るために受けたあの傷。








それをあたしは包み込むように握り締める。







「…哲」


「……なあに?」












……さっきまで。


あんなに緊張してて。






頭が回らなかったのに。







今は。



とっても静かだ。





この大きな手に包まれると。

そう、なれるんだ。






あたしは穏やかになれる。







「哲、好きだよ」

< 201 / 368 >

この作品をシェア

pagetop