花蓮【完結】
「拓!」



バン!と、運転席の扉を閉めて哲が走って来た。
哲がいたマンションは病院の近くだったからすぐだった。



菜々美の肩から頭を離して、拓斗は立ち上がった。



「哲ちゃん、行くか」


「……ああ」



この中で一番悲しんでるのは哲のはずだけど、哲が一番冷静に見えた。




花蓮の後輩は泣き叫んだりしてて。
それを慰めたり、抱き締めて一緒に泣いたりしてるっていうのに。






哲は無表情で。
泣くわけでも、怒鳴るわけでもなくて。




拓斗の後ろにただ、黙ってついていった。




菜々美にはそれが少し、不思議に感じた。
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