花蓮【完結】
「そっか、じゃねえよ!麻美が心配じゃねえのかよ!」



泣いたりも、怒鳴ったりも、とにかく取り乱さない哲に朱美が掴みかかった。


拓斗がそれを止めようとするが、哲が腕を伸ばしてそれを制止した。





「……俺、最期は泣かないって決めたんだよ」


「は?」


「麻美、病気だったんだ」




その哲の言葉に皆が一斉に哲の顔を見た。




「な、んだよ、それ」




朱美が掴んだ手を震わせて、呟くように言う。




「……脳に悪性腫瘍があって。
余命三ヶ月だった。もって、半年」


「はああ?」


「例え、今日手術が成功して生き延びても…。
…麻美は助からないんだよ。もう」


「何、言ってんだよ!嘘ついてんじゃねえよ!」




また、朱美は胸ぐらを掴んでる手を大きく揺さ振った。
だけど、哲は眉を情けなく下げるだけで何も言わない。

< 229 / 368 >

この作品をシェア

pagetop