花蓮【完結】
俺は麻美の遺影に視線を戻した。


むすっとしてて無愛想な写真。
もっと、笑顔の写真はなかったのだろうかと本気で思う。



笑顔、とっても可愛いのに。


もう、二度と俺に微笑むことはない。




その事実が、また俺を苦しめる。





この先、麻美以上に好きになれる奴なんて現れるのだろうか。
人生狂わされるほど、愛した麻美以上に。





いつだって、麻美は自分のことを考えてなくて。
もっと、大事にしてほしかったのに自分から危ないことに突っ込んで。





そう、いつだって誰かのためだった。






俺は自分の右手に残る傷痕を眺めた。




ぐっと、それを握り締めると麻美の家を後にした。
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