花蓮【完結】
「うん、わかってる」
なつきはいつも、俺が欲しい言葉をくれる。
なつきが優しいからだ。
俺のことを大事に思ってくれてるからだ。
「…今云うことかわかんねーけどさ。
まあ、次いつ会えるかわかんねーし。
電話じゃ嫌だし…言うけど。
俺、あの子に会ったんだわ」
“あの子”
それはなつきの復讐したい女のこと。
「会ったの?」
「で、付き合うことになった」
「え?」
「早えーだろ?」
「早すぎだろ」
「ふは、なんかさ。
話してたらさ…」
なつきは笑顔を曇らせながら、続ける。
「俺、その子のこと好きだって。
思っちまったんだわ。
情けねーよな、復讐のためだけに今まで踏ん張って。
タトゥーまで入れたのに。
…あの笑顔奪いたくねえって思っちまったの」
自嘲気味に笑うなつきの顔を見て、俺は胸がいっぱいになる。