花蓮【完結】
「…やめちゃえばいいじゃん。
好きなら」


「…それは、やっぱり無理。
俺、誓ったし」


「はあ…。
まじで頑固、お前」


なつきは情けなく笑ってから


「知ってる」


そう、言った。




その目はどこか、遠くを見ていた。
これからなつきは、傷を負っていくんだ。




復讐なんかしたばっかりに。



それは、また別のお話。





「俺、頑張るから…なつきも頑張れ!
そんで、彫師になったら俺にタトゥー彫ってよ!
麻美、命!!って」


「ふは!何だそれ!」


「大マジだっつうの!!」


「やめとけ、やめとけ」


「あんなー俺、麻美以外まじで考えらんねえんだからなー!
他の女とか無理だからいいんだよ!」


「……いや、まじな話…。
名前は彫るなよ」


「何でだよ」


「…イニシャルぐらいなら認めてやる」


「偉そうだな、おい」


「まあ、彫るの俺ですし?」


「…なつきには頼まねえーーー」


「はは、勝手にしろ」




けらけら笑うなつきに、俺は心の中で改めて感謝した。


今、こんなに笑えるのは。
きっと、なつきがいたからだ。
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