花蓮【完結】
「麻ちゃん、誰にも知られたくなかったんだと思うよ?」


「誰にも?」


「うん、だって哲さんにあんな態度取ってたじゃん。
今、思えばあれって哲さんを自分から離れさせようとしてたってことだよね。
きっと、哲さんにも知られたくなかったんじゃないかなあ」


「ああ、それは思った」



朱美がそれに頷く。
哲に急にもう、会いたくないと言った日。



三人がその日のことを思い出していた。



「あんな態度、麻ちゃんらしくないしねえ」

遠くを見ながら言う琴子に、朱美が体を前に出して言った。


「私、麻美に言ったもん。
らしくねえじゃんって」


「それでなんだって?」


「時期が来たら言う、かもって」

人差し指を立てて言う朱美に、

「…ぜってえ嘘!」

佐緒里は即答した。


「間違いねえな!」


「麻ちゃんらし~」




あははってひとしきり笑うと、三人は真面目な顔になる。
思ってることはきっと、三人一緒だろう。



「…次、麻美に会ったら殴ってやる」


「あ、私も」


「ことも~」


「私は執念深いからな、麻美、覚えとけよ!」




佐緒里はそう言って、空を仰ぐように天井を見上げた。

その先にいる麻美に向かって云うように…。
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