花蓮【完結】
佐緒里も、私を受け入れようとしてるのかさっきまでのきつい視線を無くして私に話しかける。
「まあ、だからさ。
喧嘩なんかしてないで、バイクぶっ放してる方が楽しいってことよ」
「そーそー、喧嘩ばっかしてたら彼氏出来ねーよ?」
「ふは、まじ言えてる」
「麻美が言うか、それ。彼氏いたことねーくせに」
「はあ?あたしに男なんざ、いらねーの。
花蓮がいたらあたしはじゅーぶん」
その、言葉が最初は信じられなかった。
だって、麻美さんは側を通ったら思わず振り向いてしまうような容姿だったから。
でも、これから徐々に知ってく内に。
麻美さんの、人生を現すようなこの言葉を、何度も何度も聞いた。
“花蓮がいたらじゅーぶん”
麻美さんは。
本当に、自分の幸せよりも花蓮の幸せを選んだんだ。
生涯を終えるその時まで。