千年の追憶*番外編*
炎は頬を膨らませたが、直ぐに思い直したようだ。


「そうですよね?
いくら礼孝様でも知るはずないわ。
あたし早時の事は、ずっと秘密にしてたんですから!」


「お前。俺の事、誰にも言わなかったのか?」


早時は不思議そうな顔を炎に向けた。


そんな早時の美しい顔を見た炎は、今まで私には見せた事のない表情を早時に返した。


「早時はあたしの特別だから。
誰にも言えなかったの。」


それは初めて見る炎の、女の表情だった。


恥じらうような炎の顔を見て、私は炎に対して感じた事のない想いを覚えた。


もしかしたら炎は、私から離れて行ってしまうのでは…?


寂しさとは違う感情だった。


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