千年の追憶*番外編*
「俺を好きになるな」


俺はあの娘にそう言った。


あの娘。-炎-といったか。


大きくなったんだな。


俺が迂闊にも鬼の姿を見られた時は、まだホンの幼い少女だった。


あれから何年経つんだろう。


人間の姿で俺はひっそりと暮らしていた。


月日が過ぎても、老いない俺に気付いた村の連中。


そんな連中に化け物だと寄って集って囲まれた。


やっとの思いであの池の畔にたどり着き、傷ついた体を庇うため、無意識に俺は鬼の姿に戻っていた。


動けないほどの傷を負っていた俺は、あの池の畔で気を失ったんだ。

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