千年の追憶*番外編*
なによ…。


こんな場面でお帰りにならなくてもいいじゃないの。


もうっ…礼孝様の意地悪…。


あたしは不貞腐れながら、早時から離れた。


早時は少し頬を赤く染めて、そのままの状態で固まっていた。


「炎。嫁入り前の娘が、何をやっているんですか!
早時。キミも拒んでくれないと困ります。」


礼孝様の声で我に返ったのか、早時は大きな手で自分の口を覆うと
「すまない。」
と、言って立ち上がった。


「早時!」


あたしは、咄嗟に早時を呼び止めた。


「何処へ行くの?
まさか、出て行かないよね?」


不安な気持ちに、あたしの声が震えた。


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