千年の追憶*番外編*
早時は、無表情で私を見上げた。


私は廊下に立ち、早時は障子を開けた時の姿勢のまま、まだ座っていた。


「では、部屋の中で話をしましょう。
お邪魔しますよ。」


そう言って、私は部屋に足を踏み入れた。


奥の方に座る私を確認して、早時は私の方へ体を向けて座りなおした。


一連の動作の身のこなしにため息が漏れるほど、早時は凛々しく美しかった。


「早時は、ずっと鬼でしたか?」


私は聞かずには居られなかった。


「いや。人間として生を受けた。」


やはりな。


私は納得した。






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