千年の追憶*番外編*
礼孝は、いつもの穏やかな物腰で炎に微笑んだ。


「早時を好きな事は、分かっていますよ。」


「礼孝様…。あたし…。」


炎の眼差しが揺れている。


俺はもう、ここに居なくても大丈夫だな。
結局茶番か…。


心の中で、俺は静かに思った。


ふと、無性に暖かい感情が沸き上がり、俺の表情を柔らかく溶かしていくのを感じた。


そんな穏やかだった屋敷に、雑音が割って入ってきた。


それは、突然の招かれざる来訪者が、玄関で礼孝を騒がしく呼び出す声だった…。


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