千年の追憶*番外編*
その忠告は、一足遅くて…。


早時の鬼の姿は、ダミ声陰陽師に見られてしまった。


「…!鬼か!
初めて見るが、何と妖艶な。
そこいらの物の怪とは、別格の代物だ。
俺が感じた強い気配は、この鬼であったか!
祓うのが、ちと惜しいのう。」


いやらしい目付きで早時を見るその陰陽師は、だらしなく髭を蓄えて、ダミ声に似合いの風貌だった。


それとこの方は、礼孝様と同じ陰陽師なのに、何故か刀を腰に刺している。


「この鬼、礼孝の獲物か?
頼む、俺に譲ってくれよ。
噂に名高い鬼とやらを、一度祓ってみたい。
鬼を祓えば俺の妖刀
“紅夜叉丸”にも、
はくがつくってもんだ。」


そう言って、ダミ声陰陽師は、ニヤリと笑った。


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