千年の追憶*番外編*
その妖刀を高彬様は、紅夜叉丸(べにやしゃまる)と呼んでいた気がする。


その名の通り、引き抜かれた刃は、紅(くれない)の妖しい光を放っていた。


永い戦の中で、刀は夜叉と化し、幾人もの紅の血を、己の糧としてきたんだろうな。


あたしは、そんなおぞましい想像をしてしまった。


ううん…そんな想像どうだっていい。


早時!


あたしは、そっと早時に目を向ける。


早時は庭の角に、金色の瞳を閉じて、静かに佇んでいた。


口元が微かに動いていて、何かを唱えているように見える。


『早時!早く逃げて!』


あたしは、心の中で叫んだ。


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