千年の追憶*番外編*
「何だ?こんなもんか…。
鬼なんて大したこと、ないではないか。
邪魔したな。失礼する。」


高彬様は、捨て台詞を残して、さっさと屋敷から出て行った。


「早時…。早時…。」


あたしは腰が砕けて、その場にペタンと崩れてしまった。


「炎。大丈夫ですよ。
早時は、上手く逃げたようです。」


礼孝様はあたしの隣に膝をついて、片目を瞑って見せた。


「でも、今…。」


あたしは今見た光景を、口にするのも嫌だった。


相変わらず、礼孝様は穏やかな表情のままで、あたしに微笑んでくれていた。


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