嘘吐きな恋人
父親の浮気が原因で、母親は家を出たのはあたしがまだ小学生の時だった。

その時点で十分、浮気性な人間なんて信じられないと対人関係不信に陥りかけてたんだけれど、そのときはまだなんとかなってたんだ。


あたしより6歳年上のお姉ちゃんが、いなくなった母親と、あたしたちを顧みない父親の穴を埋めるように、あたしは絶対浮気なんてしないからね。いつか絶対幸せな家庭を築くんだからと何度もそう言ってくれて。

あぁそうだよね、それが普通なんだよね、と。あたしたちの親だった人がおかしかっただけなのよねと、そう信じかけていた。


「千沙が嫌だって思うのはしょうがないってほんと思うけどさ、たぶん姉ちゃんにもいろいろあったんだって」

「結婚してすぐに浮気するような、いろいろが?」


ぼそっと漏らすと、お兄ちゃんはきまり悪げに息を吐いた。

別に、本当にあたしだって今更こんなことを穿り返したいわけじゃないのに。
なのにこれを蒸し返してくるお兄ちゃんは、あたしの苛立ちの原因の大元がそれだと考えているのだろうか。

あたしが中2の時に結婚したお姉ちゃんは、高1の夏にはもう家に戻ってきていた。

離婚の原因は、お姉ちゃんの浮気だった。

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