嘘吐きな恋人
「まぁ、心配してんのは、ホントなんだろうし。俺ももちろん気になるし」

「それは……分かる、けど」

「俺に話しにくいんなら、ちゃんと友達に言えよ。ほら、城井くんだっけ。姉ちゃんのごたごたんとき、お前が荒れてんの、すごい心配してくれてた子、いたじゃん」


もしかして友達じゃなくて彼氏になってる?

悪戯っぽく重ねてきたお兄ちゃんに、反応が一瞬にぶった。
誤魔化すようにゆっくり瞬いて「しろでしょ?」と首肯すると、そうそうと嬉しそうにお兄ちゃんが破顔した。


「お前と連絡取れないからってわざわざここまで来てくれたんじゃん、いい友達なんだから大事にしろよ。ただし彼氏になったんだったら、お兄ちゃんに報告すること」


もう説教は終わりとばかりに、あたしの頭をぽんぽんと撫でてくるお兄ちゃんの手をやんわり退けながら、その言葉を反芻する。


良い友達、かぁ。

でもそれが一概に否定できないのも本当だった。
あたしは確かにあの時、しろに救われた。
< 19 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop