嘘吐きな恋人
「千紗、俺、千紗が一番、好きだよ。大好き。愛してる」
その声に、熱に、しょうがないかと絆されてしまうには、もう少し難しい。それでも。
「……次もししたら、そのときは本当に終わりにする」
嘘つき。
「うん、ごめんね。でも次なんて絶対ないから安心して?」
ねぇその台詞、どれだけの女の子に言った? その顔で、いったい何人だまして、転がした?
でもあたしもまたどうしようもならない嘘を吐き続けている。
どうせ次が来たって、あたしはまた、しろを許してしまうのに。
それがどれだけ苦しくても。
どれだけ、バカらしくても。
あたしはしろを好きなのかと思うと、少し困る。
だって、しろを今でも好きだと、特別なのだと認めてしまえば、それはすごくしんどい、苦しい。
でも、これがただの情だと思うには、まだ足りなくて。
きっと、そうではなくて。
なんで好きのままでいさせてくれなかったんだろう。
睫が触れ合いそうな距離にあるしろの目は、あのころと変わらないような気がするのに。
身動きのきかないところに、はまりこんでしまっているような気が、もうずっとしている。