嘘吐きな恋人
「俺は毎日でも1日中でも、ずっと千沙と一緒がいいのに」
それはだから俺は我慢したんですとでも言いたいわけですか。
「ねぇ、千沙、駄目?」
しろが立ち止って覗き込んでくるのを、ただぼんやりと見上げた。
結局振りほどけないままだったから、そうなるとあたしも止まることになる。
「千沙」ともう一度、これもまたしろお得意の甘い声で名前を呼ばれて、根負けしたのはあたしだった。
「……後でね」
「じゃあ昼休み迎えに行く! 4時間目終わったらすぐ行くから待っててね」
ぱぁっと花が咲いたように笑って、約束ときゅっと手を握る力が強まった。
そのまま歩き出したしろに、離してよともう一回押し問答するのも面倒くさくて、着いていくことにする。