嘘吐きな恋人
あれだけ振り回されているくせに、あたしはいまだにこのしろの笑顔に弱かったりする。
木原あたりに知られたら、間違いなく馬鹿じゃねぇのと言われるんだろうと言うのも、自覚済みだけれど。
惚れた方の負けだと言うのなら、まさにその通りと言うかこれだよねぇと自嘲気味に納得する。
繋いだ指先から伝わる熱は、恥ずかしいだけでも、ましてや嫌悪だけでもなくて。
苛立ちのような重苦しさも確かにあるのに、それでもどこか愛しいような気がしてしまう。
だから、そう。
馬鹿なのは間違いなく、あたしだ。
木原は呆れるを通り越して、若干怒っていた。
その理由はわかりすぎているんだけど。
――千沙は、このままずっとあいつをなぁなぁで許して、それで続けてくので、満足なんだ?
その答えを、あたしは知らない。