嘘吐きな恋人
しろの手が震えている気がした。
「……俺は、千沙と、一緒がいいよ」
なんでなんだろう。
終わらせてあげるって、もう浮気とかそんなの気にしなくてよくしてあげるってそういってるのに。
しろはいつも、別れたくないと、そう縋るんだろう。
傷つけあうだけみたいななんの発展性もない、これに。
「そっか」
それでもひどくあっけなく声はでた。
でもなんだか自分じゃない誰かが声帯を勝手に使っているみたいで。
「じゃ、別にもういっか、このままで」
このまま、で。
つきあうという概念がもはやよくわからない。
特別だという言葉が信じられない。