嘘吐きな恋人
それでもまぁ別にいいよと。
そう思ってしまうまでにどれだけきつかったと思ってるの。
八つ当たりのような熱をどこかで感じながら了承する。
と、しろがゆるく頭を降った。前髪に覆い隠されて表情が見えなくなる。
「千沙は」
絞り出された声は、昔からずっと変わらない。
あたしだけだと思っていた、思いこんでいたあのころと。
そこであぁなんだそうか、とあたしはふと気がついた。
あのまま思いこんだままでいられたら、こんな思いしなかったのかもしれないな。
幸せだったのかもしれないな。