嘘吐きな恋人
「悪い悪い、千沙はちゃんと俺が見とくから、山岡、外見てこいよ。看板のやつらペンキ壁に飛び散らして遊んでたっぽいよ」
いつのまに隣に来ていたのか木原が、あたしより先に未帆に謝りながら、釘を拾い集め始めていた。
手伝わないと、と延ばしかけた手は、「いいよもう終わるから」と木原に押し止められてしまった。
嫌だな、そんなにあたしはぼーっとしてるように見えてるんだろうか。
「ってか木原、知ってんなら止めてきてよ、なんであたし……」
「だってあいつら俺が言ってもきかねーもん。がんばっていってらっしゃい、委員長」
ぴらぴら笑顔で手を振る木原に、未帆が諦めたように肩をすくめて、廊下に出ていった。
「……ごめん」
「いやいいけどさー、マジで怪我すんなよ」
「そんなぼーっとしてたつもりなかったんだけど」
「そうかー? 山岡、さっき4回くらい千沙のこと呼んでたよ、ぜんぜん聞こえてなかったっしょ」
「マジ?」
それは本気で聞こえてなかった。だからあんな大声になってたわけだ。
冗談でも未帆の所為だとか言わなくてよかった。ものすごい墓穴掘るところだった。