嘘吐きな恋人
「俺、さっきもさー、準備抜け出して三浦ちゃんと一緒にいる城井見たよ」


なんでもないことみたいに淡々と告げるくせに木原の横顔からは、押し殺し損ねた苛立ちが透けて見えた。

へぇと軽く相槌を打ちながらも、勝手に気分は落ちていく。それが腹立たしくてまた落ちる。

何の悪循環なのよ、これは。


「止めろよ、もう。別にお前、城井みたいなちゃらちゃらしたの好きじゃないだろ。中学んときのお前の男、あんな感じじゃなかっただろ」

「まぁそうだよね」

「うん。宮原とかもさ、真面目だし、良い奴だったじゃん。なんで別れたんだったけ、お前ら。……あー、や、悪い」

「いいよ、別に」


別れた理由に思い当たって、気まずげにもごもごさせている木原に、そう返す。
別にそれは本気で気にしてないし、っていうか半ば忘れてたし。

中2くらいのときに向こうから告ってきて、なんとなくで付き合って、で中3の夏くらいに他に好きな人が出来たからとさらっと振られた。

そのときはショックだったけど、正直に告げてもらえただけたぶんマシだよねとも今なら思う。

それで二股とかされてたら、本気であの時点でトラウマ確定だったに違いない。
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