嘘吐きな恋人
あぁでも、所詮ずっと同じ気持ちなんてないんだとか、男ってあっさり心変わりするんだねとか、恋愛に引き気味になる一因にはなったかもしれないけど。


木原が「あ、しくった」とぼやきながら、金槌の後ろを使って曲がった釘を引き抜いている。

またしばらくリズミカルな音が続いた後、手元に視線を残したまま木原が呟くように問いかけた。


「お前、なんで城井がいいの」


瞬間、時間が止まった気がした。



うだるような暑い夏の日。

空から降る雨もどこか生暖かくて、でもずっと当たっていたからか身体は少しずつ冷えているような気がした。

でもそんなのもどうでもよくて、このままでいいかなもうどうでもいいかなと、そう思っていたその時、傘をさしかけてくれたのはしろだった。

心配したと怒ったような泣きそうなようなそんな顔で、抱きしめてくれたのはしろだった。


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