嘘吐きな恋人

「………忘れた」

「ふぅん、まー、あいつも最初はあそこまでじゃなかったもんな。……お、よし出来た。なー、千沙、これ良くね? 超いい出来じゃね?」

「あー、はいはい。いいんじゃない、もうそんなんで」


良くは分からないけど。でもたぶんと言う確実にあたしが作るよりかは上手く出来てるんだろうし。

賑やかなクラス内の声。開け放たれた窓から入ってくる生ぬるい風は外でも盛り上がっているらしい気配も一緒に運び込んでくる。


不意に苦しくなった。これが普通なんだと、日常なのだと強く意識する。

たとえ今この瞬間、しろが三浦さんとどこでなにをしてようとも。



――嫌だ。


違う、そうじゃない。もうどうでもいいんだって。どうでもいい、どうでもいい。

しろが何をしてようが、関係ない。


関係ないと、そう決めたでしょ、――ねぇ。


なんで決めたことくらい、ちゃんとやりきれないの。

知らず手がシャツの胸元を握りしめていたらしい。

木原が物言いたげに窺っているのは分かっていたけれど、笑顔は作り損ねたものにしかならなかった気がする。

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