嘘吐きな恋人
「南さんのとこ、なにするんだったけ? 大変そうだね」

「……夜店みたいなの」

「へぇ、楽しそう。いいじゃん。あたし、あんまりそういうの興味なくてさ、団体行動みたいなの? だからクラスの準備とかぜんぜん手伝ってなくて」


「当日は適当に冷やかすの楽しみにしてるんだけどね」と含んだ笑みを浮かべる三浦さんに、反応するのも馬鹿らしかった。

「急いでるから」と三浦さんの横をすり抜けて階段に足をかける。


そのまま1段2段と上ったところで、「ねぇ」とやたら媚びた声が追いかけてきた。
応えずそのまま足を進める。なのに、三浦さんの声は勝手に続いていく。


「誰と周るのって、聞かないんだ?」


だから、どうでもいいと思いたいんだってば、あたしは。


最近、自分がひどく女々しいような気がしてしょうがなかった。
せめてそんなのを態度に出したくなくて、だから言わないようにしているのに。

なのになんで、いちいち絡んでくるんだろう。


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