嘘吐きな恋人
「千沙」と繰り返しあたしを呼ぶしろの声が、どこまでも優しくて切なくて、大切なものを呼ぶように聞こえるのも、願望なのかもしれないけど。


「大丈夫だから」


何がよと、確かに思った。そんな声で、また嘘をつくの、と。でも。


「俺は絶対、ここにいるよ。千沙の傍にいる」


その真摯に聞こえる声を、暖かい温もりを、信じたかったのはあたしだった。


縋りつくようにして、しろの名前を口にする。こんなところで何をやっているのだと思わないでもなかったけれど。

またこの場限りの嘘なんだろう。

そうどこかで思いながらも、それでもあたしは信じていたかったし、本当はいつも信じさせてほしかった。


離れていても苦しいんなら、一緒にいたいと願ってしまった時点で、きっとあたしの負けだったんだろう。

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