嘘吐きな恋人
「千沙、さー」

「なに。っていうかあんた部活は? まだ4時なんだけど」

「そんなん、休んできたって。いいじゃん、お見舞い。いやつかさ、なんか倒れた割にやたらすっきりした顔してんね、お前。なに、とうとう城井と本気で別れた?」


問いかけつつも、そうじゃないんだろうなとは簡単に予測できる。

だって、ようやく城井と距離を置く選択肢をとってくれたと思ったのに、結局千沙は苦しそうな顔のままだったんだ。

予想通り、そんなんじゃないけどと穏やかに千沙が小さく笑う。

あ、ひさしぶりに見たなと思って、こんなんが久しぶりとかどんだけだよと内心城井を責める。あの野郎、いろいろと好き勝手しやがって。


「ただ、なんていうか……もっかいちゃんと向き合ってみようかなって、そう決めただけ」


その調子に、あぁ決めたんだなと悟ってしまう。

だから俺は何も否定できなくなって、ただふうんと相槌を打つにとどめる。
ふっと千沙が窺うように俺を見た。

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