嘘吐きな恋人
「千沙―」
「………しろ、暑い、邪魔」
いつも通り6時間目が終わるとすぐに、しろはあたしの教室までやってきた。
昼休みに三浦さんとどこかへ消えたことなんて、一切なかったみたいに。
まだ席に座ったままだったあたしの背後から、じゃれるように抱き着いてくるのもいつも通り過ぎた。
それを見て女の子が「しろちゃんかわいい」と笑うのも、まったくのいつも通りで。
腹が立つと言うよりかはあぁそうだよねと思ってしまった。
しろにとっては、罪悪感をはらむようなことでもなんでもなくて、あれがいつもなんだよね、と。
だらんとのしかかってくる腕をもう一度「邪魔」と払いのけると、しろが心底不思議そうに顔を覗き込んできた。
「どうかした、千沙。なんかご機嫌斜めだね」
それをあんたが言うのと責める台詞はもう言い飽きた感が強かった。
へにょんとした顔で困ったように笑うしろを見ていると、駄目なあたしはすぐに絆されてしまいそうになってしまう。
だから、すっと視線をそらして声を落とす。