嘘吐きな恋人
「しろ、今日の昼、どこで何やってたのか教えてくれる?」
顔なんて見ていなくても、空気でしろが軽く固まったのが分かった。
と言ってもそれはあたしへの罪悪感であるはずがない。
今これをどうやって切り抜けようかと頭をフル回転させているだけなんだ。
「え……と、見てたの?」
これもそれも、いつものパターンだと。
次が最後だと言った日からはまだ1週間も経ってないはずなんだけどなと思いながら、見てたよと小さく吐き捨てる。
「――ごめん、でも、ほんと何もしてないよ? ちょっと一緒におしゃべりしてただけって言うか」
「しろの秘密の場所に、二人で?」
淡々と言い募ったあたしに、しろがごまかすように笑ったのが視界の端に映りこんだ。
でも、ともうこれで何度目なのか分からない台詞を吐こうとするのを聞くのが嫌で、小さく息を吐く。
「しろ」とさえぎるように名前を呼んで、広げっぱなしだった教科書を机の中に放り込んで、鞄を肩にかけて立ち上がる。