不思議電波塔
四季は由貴に少しでも希望がある状況で伝えたかったため、ドナーが見つかるかもしれないからと、すぐには話さなかった。
だが適合するドナーがいなかったため、やむなく由貴にそのことを伝えると、案の定、由貴は怒った。
そんな大事なことを何故最初に俺に言わないのだと言って。
由貴は自分の骨髄の型を調べたらいいと言った。四季の型と合うかもしれないからである。
奇跡的に由貴の型は四季と一致した。
それで骨髄移植が出来たのである。
四季が退院して学校に通えるようになるまでは、一年かかった。
ひとつ歳上の四季が由貴と同じ学年なのは、そのためなのだ。
ひとつ下の学年になってしまうことに四季が抵抗を感じないかと由貴は心配をしたのだが、四季の方は由貴と同じクラスになれることを喜んでくれて、由貴は嬉しかった。
「──主人公の誕生日、四季の誕生日の翌日」
「え?…僕の誕生日の?どうして」
四季は不思議そうに言った。由貴は自分でもどうしてだろう、と思った。
あの時、四季に生きていて欲しいと思ったからだろうか。
四季に明日が来るように。
でも、それを口にしてしまうと胸が詰まりそうだった。
「──何となく」
「ふーん…。名前何て言うの」
「ユニス」
「ユニスね。由貴の中で、僕は神童なの?」
四季はいたずらっぽく笑った。由貴は気恥ずかしくて目を逸らしてしまう。
「そこまで考えているわけじゃないけど…。でも、四季のピアノ聴いてたらすごいと思うし…。そうなんじゃないの」
「ふーん…。そっか。ユニスのお話を僕が読めるのはいつ?」
「え?読みたいの?」
「うん。由貴の書く小説がどんなストーリーなのか、興味ある」
「……」
四季に読みたいと言われると、何だか嬉しくなった。