不思議電波塔



「──会長…っ」

「由貴!」

 ぐらりと由貴の身体が傾いだ。





『あははははははは…!』





 部屋に笑い声が響き渡る。

『ほーらね!優等生なんてやっていてもね!中身は何にもなかったりするわけさ!やりたいこと、今さら、あるはずないよねぇ?だって、誰かのために必要とされる綾川由貴でいることが唯一の仕事だったんだからさ!』

「黙れ!」

 怒声を放ったのが四季だ。空間に白く火花が散った。

『痛ったー…。やったね。今のはちょっと痛かったよ。ま、いいや。由貴がまともに書けない精神状態で、どれくらい出来るのかやってみれば?』

 晴の声はふっと途絶えた。

 由貴は青ざめたまま、口を押さえ込んでいる。

 四季が由貴の肩に手を回して「吐く?」と小さく聞いた。

 そのまま四季は由貴を連れて行ってしまった。





 心の中で言うのなら、人に死んでしまえばいいって言ってもいいのだと、先生は言っていた。

 でもそれは心に無気力を運んで来ただけだった。

 人に死んでしまえばいいって何で?

 人に死んでしまえばいいと心に思うのが普通の人の基準だから?

 普通と正しいは同義語ではないと思う。

 自然に手を差しのべたくなる人がいる世界というのと、どうしても手を差しのべなければならない人がいる世界というのも。



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